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個人事業主の廃業6.8万件、黒字でも畳む理由と日米の生存率差

2025年の休廃業・解散6万7,949件のうち49.1%が黒字での撤退でした。日米の開業率・生存率データから撤退を前向きな設計判断として捉え直し、今日から使える畳む基準の決め方を届けます。

この記事でわかること

  • 本文に入る前に、まず押さえるべき結論
  • 読後の行動判断が、ここからどう変わるか
  • 次に読むべき関連記事の入口
個人事業主の廃業6.8万件、黒字でも畳む理由と日米の生存率差
目次

「今月、正直しんどい」ってDMが来た。ひとりで受託をしてる子からだった。売上が去年より落ちてる。でも「せっかくここまでやったのに、今やめたら負けな気がして」って書いてあった。

あたしは即答した。「負けじゃない。むしろ今が一番冷静に決められるタイミングだよ」。

こういう相談、実は何度も受けてきた。売上が落ちてから畳むかどうか考える人は多い。でも本当は、落ちる前から考えておいた方がいい話だと、あたしはずっと思ってる。今日はその根拠になるデータを持ってきた。

事業を畳むというと、失敗の話だと思われがちだ。でも実際のデータを見ると、そう単純には言い切れない。むしろ「畳む」を選択肢としてちゃんと持っている経営者の方が、結果として長く生き残っているようにも見える。

なんでそう言い切れるか。今週、帝国データバンクが2025年の「休廃業・解散」動向調査を公表した。休廃業というのは、倒産のように経営破綻して強制的に畳むんじゃなく、経営者が自分の意思で事業をやめることを指す。この調査の中身を見て、あたしの中で「撤退」に対する見方がちょっと変わった。今日はその話をする。


黒字なのに畳む。6.8万件が示す「静かな撤退」の正体

帝国データバンクの調査によると、2025年に全国で休廃業・解散した企業は6万7,949件だった。前年の6万9,019件から1.6%減ったものの、過去10年では2024年に次いで2番目に多い水準にある。

この数字で一番驚いたのは中身だ。休廃業した企業のうち、直前期の決算が黒字だった割合は49.1%。2020年をピークに5年連続で低下し、遡って確認できる2016年以降で初めて50%を下回ったという。つまり2024年までは、休廃業した会社の過半数が黒字状態だったことになる。まだ稼げてるのに畳む人の方が多い時代が、5年以上も続いていたわけだ。

50%を割ったといっても、49.1%はまだ「ほぼ半分」の水準だ。急に潮目が変わったわけじゃなく、少しずつ黒字休廃業の割合が下がってきた、その延長線上に今回の数字がある。長い時間をかけて、経営者の判断基準そのものがゆっくり変わってきたと見た方が自然だと思う。

他の内訳も見ておく。資本金「100万〜1,000万円未満」の企業が最多で44.7%を占めた。経営者の年代は「80代以上」が24.4%で過去最高を更新した。雇用者数(正社員)は累計9万3,272人で、2016年以降で最多になっている。

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この3つの数字を並べると、見えてくる顔がある。資本金が小さくて、経営者が高齢で、それでも黒字。つまり「事業自体は回ってるけど、この規模のまま次の世代に渡す気はない」と決めた経営者が、じわじわ増えてる。ひとり社長やスモールビジネスの経営者にとって、他人事じゃない数字だ。

赤字で潰れたんじゃなく、まだ黒字のうちに自分の意思で畳んだ人が、ほぼ半分。あたしはこれ、失敗の数字じゃなくて決断の数字だと思ってる。

じゃあこの数字は、あたしたちひとり社長にとって何を意味するのか。答えを急ぐ前に、もう一つ比べたいデータがある。日本と米国で事業がどう生まれてどう消えるかを見比べると、この数字の意味がもっとはっきりする。日本だけを見ていると「黒字休廃業が多い」という事実だけで終わってしまうけど、比較する軸を持つと数字の異常さと自然さの両方が浮かび上がる。

日本は生き残り、米国は淘汰される。開業率と生存率の逆転

中小企業庁の「2025年版中小企業白書」によると、2023年度の日本の開業率は3.9%、廃業率も3.9%で横ばいだった。一方で米国・英国・フランスの開業率は10%程度で推移していて、日本の開業率は主要国の中でもかなり低い水準にある。

ところが起業後5年生存率で見ると、逆転が起きる。日本は約80%と、主要国より高い数字が出ている。少ししか生まれないけど、生まれた事業の8割が5年後も残っているということだ。

米国側の数字も見る。米労働統計局(BLS)は「事業所動態調査」というデータを公表していて、新設事業所の生存状況を追跡している。それを基にした報道集計によると、新しく生まれた事業所の45%から50%程度が5年以内に姿を消すという。開業率は日本の2倍以上あるのに、生存率は日本よりかなり低い。

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整理するとこうなる。日本は生まれにくいけど、生まれたら生き残りやすい国。米国は生まれやすいけど、半分近くが数年で消える国。スタートラインの数からして、ゲームの前提が違う。

日本で開業率が低いのは、慎重な人が多いからだとよく言われる。あたしはそれだけじゃないと思ってる。一度始めたら簡単にはやめられない空気があるから、始める前に踏み込みすぎるほど慎重になる。生存率の高さは、実力の証明であると同時に、後戻りしにくさの裏返しでもある。

さっきのTDBデータで経営者「80代以上」が過去最高の24.4%だったことを思い出してほしい。日本は生存率が高い分、経営者が引退の年齢を迎えるまで事業を続けているケースが多い。生き残る力が強いからこそ、畳むタイミングが「経営判断」より先に「体力の限界」で来やすい。この構造自体が、撤退を後手に回らせる一因になっていると、あたしは見ている。

この違いが「撤退」に対する感覚の差を生んでるんじゃないか。あたしはそう見てる。もう一つ、米国側のデータを見てから、その話に入る。

一人ビジネスが1億円企業に化ける、米国のもう一つの顔

米国勢調査局(Census Bureau)が2026年5月に公開した記事によると、2023年時点で米国のノンエンプロイヤー事業所は3,042万7,808件あった。ノンエンプロイヤーというのは、従業員を1人も雇わずに1人で回している事業のことを指す。

この3,000万件超の合計収益は約1.8兆ドルで、米国のGDPの6.4%を占める。そしてこの中の11万7,060件が、2023年に年商100万ドルを超えた。日本円にすると1億5,000万円前後の水準になる。

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米国は5年で約半分が消える。その一方で、生き残った一人ビジネスの中には桁違いに化ける層が一定数いる。数百万件が生まれて大量に淘汰されて、その中の一部が跳ねる。ハイリスクだけど、跳ねたときのリターンも大きい生態系になっている。

この11万7,060件の中身までは今回のデータでは分からない。コンサルタント、ネットショップ運営者、コンテンツ制作者、いろんな業種が混ざっているはずだ。共通してるのは、従業員を増やさずに収益だけを桁違いに伸ばした点だと思う。組織を大きくすることと、事業を大きくすることが、米国では切り離されて進んでいる。

日本でも「ひとり社長」という言葉自体は広く使われるようになった。ただ、この言葉が指してる規模は、まだ月商数十万円から数百万円のレンジが中心だとあたしは感じてる。米国の11万7,060件が示すのは、その先にもう一段、桁が違う層があるという事実だ。目指す必要は無いけど、視界に入れておく価値はある数字だと思う。

日本にはこの「跳ねる一人ビジネス」を捉えた統計が、少なくともあたしが今回調べた範囲では見当たらなかった。統計が無いこと自体が、日本ではまだこの規模のひとり社長が珍しいという証拠かもしれないし、単に集計されてないだけかもしれない。ここは正直に「分からない」と言っておく。

それに、生存者バイアスの話でもある。11万7,060件が化けた裏では、それより多くの数が5年以内に消えている。派手な成功例だけを見て「米国はすごい」と思うのは、ちょっと危険だ。跳ねる確率自体は、決して高くない。ここから先は数字の外側、あたしの解釈になる。

ここからは解釈。撤退は失敗ではなく設計の結果だと思う

黒字休廃業が49.1%まで来てるという事実を、あたしはこう読む。日本の経営者は「まだ稼げるうちに畳む」という判断を、静かに増やしてきたんじゃないか。

廃業は失敗という空気がまだ強い国で、赤字に転落する前に決断してる人がほぼ半分いる。これ、実はすごいことだとあたしは思う。世間のイメージより先に、現場の経営者の感覚の方が動いてる。

米国と比べると、その差がもっと見えてくる。米国は最初から「大半は消える」という前提で走るゲームだから、畳むこと自体に恥がついて回らない。次に行くための通過点として扱われる。日本は生存率が高い分、「続けること」がデフォルトの成功で、「畳むこと」が例外的な失敗として扱われやすい空気がある。

だから日本のひとり社長は、事業をやめる時に言葉を持たない。「畳みました」の後に続く言葉が用意されてないのだ。倒産なら「大変でしたね」で済むけど、黒字での撤退にはねぎらう定型句すらない。あたしはこれを「失敗の言語化」がまだ足りてない状態だと呼んでる。数字が示してるのは決断の存在なのに、それを語る言葉が社会の側にまだ追いついてない。

断言する。撤退は恥じゃない。ただしこれはあくまであたしの読み方で、因果関係を証明するデータではない点は正直に言っておく。示してるのは相関、というか傾向の話だ。「撤退は前向きな設計判断かもしれない」という仮説として受け取ってほしい。

もちろん全部が前向きな撤退とは限らない。体調を崩した、家族の事情で続けられなくなった、資金繰りがどうにもならなくなる寸前だった。そういう黒字休廃業も混ざってるはずだ。あたしが言いたいのは「全員が計画的に撤退している」ということじゃない。「撤退した人の半分近くは、少なくとも赤字に転落する前に動けている」という事実の方を、もっと評価していいんじゃないかということだ。

これを読んでるあなたが、今まさに事業を続けるかどうか迷ってるなら、聞きたいことがある。畳むことが怖いのは、事業がなくなるからじゃなくて、「畳んだ人」という肩書きが怖いからじゃないか。あたしも独立した頃、周りの目線が一番怖かった。でもTDBの数字を見た今なら言える。今年畳んだ6万7,949件のうち、約半分は黒字であなたと同じ判断をしてる。孤独な決断じゃない。

今日からできること。畳む基準を先に決める3つの問い

じゃあ、あたしたちひとり社長は今日、何をすればいいのか。

答えは1つ。畳む基準を、まだ畳む必要がない今のうちに決めておくこと。これだけでいい。

問いを3つ用意した。1つ目、今の事業は売上が何%落ちたら畳むと決めるか。今日、数字を1つだけ決めてほしい。「20%」でも「3ヶ月連続赤字」でもいい。あたしは独立してすぐ、月商が最低生活費の1.5倍を3ヶ月切ったら撤退、と決めた。

2つ目、畳むとしたら誰に何を引き継ぐか。今日、名前を1人思い浮かべてほしい。顧客リストや取引先、進行中の案件を、誰に渡せば一番傷が少ないか考えるだけでいい。

3つ目、畳んだ後、最初の1ヶ月で何をやるか。今日、1行でいいから書いてほしい。「次の仕事を探す」でも「1ヶ月休む」でも構わない。

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書く場所はスプレッドシートの1行でも、手帳の隅でもいい。大事なのは頭の中だけで持たないことだ。数字にして、目に見える場所に置いておく。頭の中だけだと、しんどくなった瞬間に基準そのものが曖昧になって、結局「もう少しだけ頑張ろう」に流される。

あたしも副業を始めた頃、赤字の案件を「せっかく取った案件だから」で半年引きずったことがある。基準を先に決めてなかったから、感情で判断が遅れた。今なら分かる。基準は、しんどくなってから作るものじゃない。しんどくなる前に作るものだ。

もう一つ、できれば1人でいい、この基準を誰かに話しておいてほしい。信頼できる友人でも、家族でも、コンサルでもいい。誰かに話した基準は、自分だけの中にある基準より簡単には曲げられなくなる。あたし自身、クライアントには最初の打ち合わせで必ず撤退ラインを聞くようにしてる。

取引先がいる仕事なら、もう1つ足したい。契約更新のタイミングで、自分の基準に照らして継続するかどうかを毎回確認すること。基準を作っただけで満足して、実際には確認しないまま数年経つ人が多い。年に1回でいいから、決めた数字と今の実績を並べて見る時間を作ってほしい。

「続ける」も「畳む」も、自分で選んだと言えるようにする

もう1つだけ、今日からできることを渡す。月に1回、決めた基準に自分がまだ触れているかを確認する日をカレンダーに入れてほしい。5分でいい。

続けるという選択も、畳むという選択も、どっちも設計した結果であるべきだとあたしは思ってる。「なんとなく続けてしまった」も「なんとなく諦めた」も、どっちも一番良くない。

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あたしのクライアントに、去年の今頃「もう限界かも」と相談してきた人がいた。一緒に数字を見直したら、実は基準ラインまでまだ距離があった。その人は結果として続ける方を選んだ。今は「あの時、感情だけで畳んでたら後悔してた」と話してくれる。基準を作る目的は、畳むことを勧めるためじゃない。続けるにしても、それが感情の惰性じゃなく選択だったと、後から自分で言えるようにするためだ。

逆のケースもある。別のクライアントは、基準に照らして「もう続ける理由がない」と自分で気づいて、半年かけて事業を畳んだ。取引先への引き継ぎも、次の仕事の準備も、慌てずに進められたと言っていた。基準があったから、しんどくなる前に動けた。この2人の違いは、能力じゃなくて、基準を先に持っていたかどうかだけだったと、あたしは思ってる。

聞きたい。あなたは今、続けるを選んでる。それとも、選ばされてる。すぐ答えられないなら、それは基準がまだない証拠だ。今日決めた基準を、来月のカレンダーに1個だけ書き込んでほしい。

まとめ

2025年の休廃業・解散は6万7,949件、うち49.1%が黒字での撤退だった。日本は開業率3.9%・生存率約80%という「生まれにくいが生き残りやすい」国だ。対する米国は、開業率10%程度・5年生存率45〜50%という「生まれやすいが淘汰されやすい」側にいる。前提が違うから、撤退への感覚も違って当然だとあたしは思う。

どちらが正しいという話じゃない。日本の高い生存率も、米国の跳ねる一人ビジネスも、それぞれの前提の中で成り立ってる仕組みだ。あたしたちが持ち帰るべきなのは、どっちの国のやり方を真似るかじゃなく、「畳む」を最初から選択肢に入れて経営を設計する発想の方だと思う。

冒頭でDMをくれた子には、もう一つ伝えた。「撤退の基準を先に決めておけば、今悩んでる時間そのものが減る」。悩んでる時間は、次の一手を考える時間じゃない。基準さえ決まっていれば、あとは数字を見て動くだけになる。

続けるにしても畳むにしても、それを選んだのが自分だと言えるかどうか。そこだけは譲らないでほしい。あたしも今日、自分の基準をもう一度カレンダーに書き込むつもりだ。畳んだ経験も、続けた経験も、どっちも次の判断の材料になる。失敗を隠さず言葉にできる人から、次のステージに進んでいく。あたしはそう信じてる。

ミコト
Written byミコトBusiness Strategist

女性だからこそ、AIを使いこなさなきゃって思ってる。仕事も、副業も、推し活も、旅行も、全部やりたい。人生一度きりなのに時間は足りないじゃん?だからAIに任せられることは全部任せる。浮いた時間で本当にやりたいことをやる。それがあたしのスタイル。ここにはあたしが実際にやったことをまとめてるだけ。誰かのためになったらいいなって思って書いてるよ。