2026年のマーケ地図が1枚にまとまった。SEJトレンドTOP10で「自分の現在地」を確認する
Search Engine Journalが2026年デジタルマーケトレンドTOP10を発表。GEOシリーズ6本を書いてきた筆者が10項目を3層に整理し、読者向け自己診断チャートを作った
Search Engine Journalが「The Top 10 Digital Marketing Trends For 2026」を公開した(出典)。
僕はこの半年、GEOシリーズとして6本の記事を書いてきた。AI検索時代のマーケティング戦略について、それなりに網羅しているつもりだった。だがSEJの10項目と自分の記事を照合したところ、カバーできていたのは3割程度にとどまる。残り7割は「知ってはいるが手が回っていない」領域だった。
10個のトレンドをバラバラに追いかけても、頭に入らない。そこで3つの層に再整理してみた。そのうえで、読者が自分のマーケ戦略を10項目で採点できる自己診断チャートも作った。全部を同時にやる必要はない。ただ、どこに穴があるかを知ることが次の一手を決める起点になる。「自分のマーケ戦略の健康診断」だと思って読んでほしい。
SEJの10トレンドを3つの層に分けて捉える
SEJが挙げたトレンドを、そのまま10個並べても頭に入らない。僕なりに構造化してみた結果、3つの層で捉えるのが最も整理しやすかった。
まず、SEJが挙げた10項目を日本語に訳して一覧にする。
- 会話型検索がSEOを書き換える
- 動画がそのまま売り場になる
- プライバシーとデータ所有権が競争優位に変わる
- リテールメディアネットワークがニッチから主流へ移行する
- クリエイターとコミュニティが共創の主役になる
- AIがマーケティングのOS(基盤)になる
- アトリビューションが崩壊し、計測が再定義される
- 没入型ゲーミフィケーションが台頭する
- 人間力(タレントとカルチャー)が最終防衛線になる
- 統合的オーソリティの構築がすべてを貫く
これらは独立した施策ではない。互いに連動し、影響し合っている。僕はこの10項目を3つの層に分類した。
- 第1層「検索の再定義」(1・7・10)——読者が最初に体感する変化
- 第2層「売る場所の構造転換」(2・4・5・8)——売上の作り方が変わるビジネスモデルの話
- 第3層「裏側のインフラ変動」(3・6・9)——目に見えにくいが、第1層と第2層を支える土台
第1層は、マーケ担当者が日々の業務で最初に「何かが変わった」と感じる変化。第2層は「どこで売上を作るか」というビジネスモデルの転換。第3層は普段は見えないが、上の2層を支えている基盤の変化にあたる。
この順番で解説していく。自分がどの層まで対応できているかを意識しながら読んでほしい。
第1層「検索が会話になる」——ゼロクリックの津波と計測の崩壊
ゼロクリック検索の比率が急拡大している。SparkToro・Datos調査(2024年米国データ)によると、米国の検索の58.5%がクリックなしで完結しているという推計がある。SEJほか複数メディアが引用している数字で、2026年現在はさらに上昇しているとみられている。AI Overviewが表示されるクエリに限れば、割合はさらに高く「80%超」という観測値も複数ある。ただし原典の一次確認が難しいため、参考値として捉えてほしい(click-vision調査ほか)。
僕はGEOシリーズの第1弾で「Googleで1位でも、AIに引用されなければ意味がない」と書いた。この認識自体は間違っていなかったと思う。ただ、SEJのレポートを読んで気づいたことがある。検索の変化を「SEO vs GEO」の二項対立で捉えること自体が、すでに古くなりつつあるという点だ。
SEJは「統合的オーソリティ」という概念を提示している。SEO、GEO、SNS、動画、コミュニティのすべてを横断して「ブランドとしての信頼性」を積み上げろ、という主張。チャネルごとに個別最適化する時代は終わりつつある。すべてのタッチポイントで一貫した権威を構築することが求められている。
ここで気になるのが「では何を指標にすればいいのか」という問い。従来のクリック数や検索順位だけでは、もう全体像をつかめない。
SEJの答えは明確だった。メディアを事業成果へのパイプラインとして扱う。データを資本として運用する。AIをエンジンに据える。計測を「証拠」として機能させる。この4つの統合が求められている。
実際、計測の崩壊は深刻な段階に達しつつある。SEJが引用する調査によれば、ROI計測に自信を持てているCMOはごく一部にとどまるという(出典は業界調査の引用のため参考値として扱いたい)。プライバシー規制、ウォールドガーデン、デバイス横断の断片化が重なり、従来のアトリビューションモデルが機能しなくなった。その結果、マーケティングミックスモデリング(MMM)という、以前は大企業向けだった手法が再び注目を集めている。
MMMとは、広告費・売上・外部要因を統計モデルで分析し「全体としてどの施策が事業成果に貢献したか」を推定する手法。個別のクリックを追跡するのではなく、マクロな視点でマーケティング投資の効果を測る。Googleも2025年からMMM向けのオープンソースツール「Meridian」を公開した。大企業だけの手法ではなくなりつつある。
僕が「LLM流入527%増、ノークリック69%」で紹介したデータも、この文脈で捉え直したい。クリックが減ること自体は脅威だ。だが計測方法を変えれば「AI経由のブランド認知がどれだけ事業に貢献しているか」を別の角度から評価できる。クリック数の減少に悲観するのではなく、計測の枠組み自体をアップデートする。それがこの層の核心になる。
第2層「売る場所が変わる」——動画コマースからリテールメディアまで
4つのトレンドがこの層に集中している。動画コマース、リテールメディア、クリエイター共創、ゲーミフィケーション。共通するのは「コンテンツと購買の境界が消えた」という変化。
動画の進化が最も劇的だ。SEJが引用する業界データによると、広告主の86%が動画広告制作に生成AIを使用中か、使用を予定しているという(IABが2026年に実施した調査)。2026年末にかけてAI生成動画広告の比率が大幅に上昇するとの見通しも示されている。「動画を作れるかどうか」ではなく「動画をどう設計するか」で勝負が決まる時代に移行した。
たとえば、商品紹介動画を1本作るだけなら生成AIで数時間あれば完成する。だが「誰に」「どの購買段階で」「何を伝えて」「どこに誘導するか」の設計がなければ、その動画は再生されるだけで終わる。作る力よりも設計する力。これが動画コマースの本質的な変化だと感じている。
リテールメディアの数字はさらにインパクトが大きい。eMarketerによると、米国のリテールメディア広告費は2026年に693億ドル(約10.4兆円)に達する見通し(出典)。前年比17.9%の成長率で、検索広告やSNS広告の伸び率を上回っている。同eMarketer予測では、AmazonとWalmartが全体の88%超を占める寡占構造が鮮明だ。
リテールメディアが注目される理由は構造的なものだ。ファーストパーティの購買データと広告枠を同一プラットフォーム内に持っている。Cookie廃止の流れで、サードパーティデータに頼る広告運用は限界を迎えた。「実際に買った人のデータ」を持つプレイヤーが、広告市場で圧倒的に有利になっている。
日本ではまだ馴染みが薄いかもしれない。だが楽天やイオンがリテールメディア事業を本格化させている。自社ECの購買データを活用した広告配信は、中小のEC事業者にとっても無視できない流れ。「うちには関係ない」と思っている方ほど、この数字の意味を考えてほしい。
クリエイターとコミュニティの台頭も同じ文脈にある。企業が一方的にメッセージを発信する時代から、クリエイターと「一緒に作る」モデルへの移行が加速している。重要なのは、クリエイターを「拡散装置」として使うのではなく、商品設計やコンテンツ制作のパートナーとして迎え入れる姿勢。これができている企業とできていない企業で、成果に大きな差が出始めている。
ゲーミフィケーションについても触れておく。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)を活用した没入型キャンペーンが増えている。ポイントを貯めるだけのゲーミフィケーションではない。商品を仮想空間で試着したり、ゲーム内でブランド体験をしたりする「記憶に残る購買体験」の設計。エンターテインメントと商取引の境界が、文字通り消えつつある。まだ大多数の企業が着手できていない領域だが、先行者は確実に成果を出し始めている。
僕がこれまで書いてきたGEOシリーズは第1層に集中していた。第2層はほぼ未着手だ。「AhrefsがSNS管理を始めた」でツールスタックの再設計には触れた。だが動画コマースやリテールメディアの実践記事はまだ書けていない。この自覚が、今回の記事の出発点になっている。
第3層「裏側の地殻変動」——AIマーケOS、プライバシー、人間力
表からは見えにくいが、第1層と第2層を支えているインフラが3つある。
1つ目は、AIがマーケティングのOS(基盤システム)になるという変化。分析、最適化、メディアバイイング、ワークフロー自動化、カスタマージャーニー設計。これらすべてにAIが基盤として入り込む。個別のツールとしてAIを「使う」段階から、マーケティング活動そのものがAIの上で動く段階への移行が起きている。
僕は「AI研修を受けただけの企業」の記事で、AIを導入しても成果が出ない企業のパターンを取り上げた。根本的な問題は「OS化」の視点が欠けていること。ツールを1つ導入するだけでは意味がない。業務フロー全体をAI前提で再設計する必要がある。
たとえば「ChatGPTでキャッチコピーを作っています」と言う企業は多い。だが、そのコピーが使われる広告配信の最適化も、配信結果の分析も、次の施策への反映も、すべて人力のまま。これではAIを「使っている」とは言えない。点ではなく、線で使う。それがOS化の意味するところ。
2つ目はプライバシーとファーストパーティデータ。サードパーティCookieへの依存が限界を迎え、自社で収集・管理するデータの重要性が急上昇した。SEJはデータを「資本」と呼ぶ。資本が厚い企業と薄い企業で、マーケティングの選択肢は根本的に異なってくる。
グローバルのデジタル広告費は2026年に7,400億ドルを超える見通し(eMarketer予測)。この巨額な投資を有効に使えるかどうかは、自社のデータ基盤の厚みに直結する。データを持たずに広告費だけ積み上げても、ターゲティング精度は上がらない。費用対効果が悪化するだけだ。
3つ目は「人間力」。AIがマーケのOSになる時代に、逆説的だが人間にしかできない仕事の価値が上がっている。SEJはタレント(人材)とカルチャー(組織文化)を「最終防衛線」と位置づけた。AIが得意なオペレーション領域を機械に任せ、人間はブランドの世界観設計、顧客との関係構築、倫理的な判断に集中する。
この3つは地味だが、ここが弱いと第1層も第2層も機能しない。GEOで検索対策を完璧にしても、計測基盤の欠如が効果の証明を阻む。動画コマースに投資しても、ファーストパーティデータがなければターゲティングは雑になる。裏側のインフラが、すべての施策の成果を左右する土台になっている。
僕自身、「AIを使っている」と胸を張れる領域は、正直まだ限定的だ。Claude Codeで記事制作のワークフローは自動化した。だがマーケティング業務全体をAI基盤で再設計できているかと問われれば、正直まだ道半ばだ。「AIを使っているだけでは差がつかない」と書いた本人が、自分自身の第3層に穴を抱えているのが実態だ。この正直な自己認識が、次のセクションの自己診断につながる。
自己診断チャート——10項目で「自分の現在地」を採点する
ここまで読んで「結局、自分は何をすればいいのか」と思った方も多いはず。
10項目の自己診断チャートを作った。それぞれ「○(対応済み)」「△(認識はあるが未着手)」「×(初めて知った)」の3段階で回答してほしい。
| # | 層 | チェック項目 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 1 | 第1層 | 会話型検索(GEO/AEO)への対策を始めている | ○/△/× |
| 2 | 第2層 | 動画を「認知」ではなく「購買導線」として設計している | ○/△/× |
| 3 | 第3層 | ファーストパーティデータの収集・活用基盤がある | ○/△/× |
| 4 | 第2層 | リテールメディア広告を検討または運用している | ○/△/× |
| 5 | 第2層 | クリエイターとの共創(拡散依頼ではなく)を実施している | ○/△/× |
| 6 | 第3層 | マーケ業務のAI基盤化(個別ツール導入ではなく全体設計)に着手している | ○/△/× |
| 7 | 第1層 | Cookie廃止後のアトリビューション計測方法を用意している | ○/△/× |
| 8 | 第2層 | 没入型コンテンツ(AR/VR/ゲーミフィケーション)を試したことがある | ○/△/× |
| 9 | 第3層 | AIに任せる仕事と人間がやる仕事を明確に分けている | ○/△/× |
| 10 | 第1層 | チャネル横断で一貫したブランドオーソリティを設計している | ○/△/× |
結果の目安を共有する。
○が7つ以上——2026年のマーケ戦略としてかなり先進的。残りの△を○に変えることに注力すればいい。
○が4〜6つ——部分的に対応できているが穴がある。特に第3層(AI OS、プライバシー、計測)が弱い場合、土台から見直したほうがいい。第1層と第2層の施策が「やっているのに成果が出ない」状態になりやすいからだ。
○が3つ以下——率直に言って、危機感を持つべきタイミングにある。ただし全部を一気にやろうとしても破綻する。最も投資対効果が高いのは、第1層の「会話型検索対策」から着手すること。GEOシリーズを読んでいない方は「検索の地図が変わった」が入口としておすすめできる。
ちなみに僕自身の結果は、○が3つ、△が5つ、×が2つだった。GEOシリーズ6本を書いてきた人間でこのスコア。第2層の動画コマースとリテールメディアがほぼ手つかずだったことが、一番の気づきになった。
まとめ——全部やらなくていい。でも「知らなかった」は許されない
SEJの10トレンドは、それぞれが独立した施策ではない。3つの層として連動し、互いを支え合っている。
全部を同時に実行できる企業はほとんどいない。個人事業主や小規模チームなら、なおさら無理がある。大事なのは「今の自分がどの位置にいて、次にどこへ進むか」を把握すること。
僕の場合、GEOシリーズで第1層はある程度カバーできていた。次に着手すべきは第3層の「AI基盤化」と「計測の再設計」。その先に第2層の「動画コマース」がある。この優先順位は読者ごとに違う。だからこそ自己診断チャートを使って確認してほしい。
1つだけ、言い切る。×が3つ以上あるなら、マーケ戦略の棚卸しは今すぐ始めたほうがいい。トレンドを追いかけるためではない。自分のビジネスの穴を塞ぐために必要な作業だ。知っていれば対策が打てる。知らなければ、穴が空いていることにすら気づけない。
マーケティングの地図は毎年書き換わる。だが2026年の変化は、これまでの延長線上にはない。検索の形が変わり、売る場所が変わり、それを支えるインフラが根本から入れ替わっている。全部に対応する必要はないが、地図を持たずに走り続けるのは危険だ。
GEOシリーズ未読の方は「AIを使っているだけでは差がつかない理由」が入口としておすすめ。第1層の全体像がつかみやすい。自己診断の○を1つでも増やすことが、明日のマーケ戦略を変える第一歩になる。

AIを使いこなせない方は、この先どんどん差がつきます。僕はAIエージェントを毎日動かして、壊して、直して、また動かしてます。そういう泥臭い実践の記録をここに書いてます。理論は他の方にお任せしました。僕は動くものを作ります。朝5時に起きてウォーキングしてからコードを書くのがルーティンです。


